MENU
駅やエリアで検索

知るシリーズ③離婚した場合の年金分割について

離婚における年金分割の仕組みについて

離婚時の年金分割は、夫婦の一方が専業主婦(主夫)やパートタイマーとして働き、もう一方が主に収入を得て厚生年金や共済年金を積み立てていた場合に、公平性を保つために設けられた制度です。離婚後の経済的安定を目的としており、双方の合意または裁判所の決定によって行われます。

以下では、具体的な仕組み、手続き、注意点について詳しく解説します。


1. 年金分割の種類

1.年金分割の種類
1.年金分割の種類

年金分割には大きく2種類あります。

(1) 合意分割

  • 対象:2008年4月以降の厚生年金および共済年金の保険料記録
  • 特徴:夫婦間の合意が必要
  • 分割割合:最大50%まで分割可能(双方の合意が必要)

(2) 3号分割

  • 対象:2008年4月以降の期間で、夫または妻が第3号被保険者(主に専業主婦・主夫)の場合
  • 特徴:合意不要で自動的に分割可能
  • 分割割合:原則50%(法律で定められているため例外なし)

3号分割は、専業主婦(夫)が年金を直接支払っていなかった期間について公平に分配される仕組みです。


2. 年金分割の対象になる年金

2. 年金分割の対象になる年金
2. 年金分割の対象になる年金

分割の対象になるのは、主に以下の部分です。

(1) 厚生年金

厚生年金は、被用者(会社員や公務員)が加入している年金制度です。離婚時には、この厚生年金の「報酬比例部分」が分割対象となります。

(2) 共済年金

共済年金も厚生年金と同様に、報酬比例部分が対象となります。2015年10月以降、共済年金は厚生年金に統合されました。

※ 基礎年金(国民年金)は対象外

基礎年金部分(老齢基礎年金)は、分割の対象にはなりません。基礎年金は個人が支払った保険料に基づいて計算されるため、夫婦間で分割する仕組みはありません。


3. 年金分割の手続き

3. 年金分割の手続き
3. 年金分割の手続き

(1) 必要な書類

  • 年金分割を申し立てるには以下の書類が必要です。
    • 年金分割のための情報提供請求書(年金事務所で取得可能)
    • 離婚届受理証明書または離婚裁判の判決文
    • 本人確認書類(運転免許証など)

(2) 手続きの流れ

  1. 情報提供請求
    • 年金事務所で情報提供請求を行い、対象となる保険料記録や分割可能な額を確認します。
  2. 合意または裁判所の調停
    • 合意分割の場合、夫婦間で分割割合を話し合い、合意します。合意できない場合は裁判所で調停・裁判が必要です。
  3. 年金分割の申し立て
    • 離婚成立後、年金分割を年金事務所に申請します。
  4. 年金の記録変更
    • 分割が認められた場合、分割後の年金記録が双方の基礎年金番号に反映されます。

4. 分割後の年金への影響

4. 分割後の年金への影響
4. 分割後の年金への影響

(1) 分割を受ける側

分割を受けた側は、自身の年金額が増加します。ただし、分割された年金額が生活に十分な額になるかは個別の状況に依存します。

(2) 分割をする側

分割を行った側は、自身の年金額が減少します。ただし、分割割合を合意の範囲内で調整することで、負担を軽減することも可能です。


5. 注意点

5. 注意点
5. 注意点

(1) 手続き期限

年金分割の手続きは、原則として離婚成立後2年以内に行う必要があります。期限を過ぎると分割の請求権を失う可能性があります。

(2) 分割割合の合意が必要

合意分割の場合、分割割合について夫婦間での合意が求められます。話し合いが難しい場合は弁護士や調停を利用することを検討してください。

(3) 3号分割の自動性

3号分割については、特別な合意がなくても50%の分割が行われます。ただし、年金事務所での手続きは必要です。

(4) 経済的な影響

分割後の年金額では生活が難しい場合もあるため、離婚後の生活設計を事前に考えることが重要です。

(5) 弁護士や専門家の相談

分割手続きは複雑な場合があるため、弁護士や社会保険労務士など専門家に相談するのが安心です。


6. 具体例

6. 具体例
6. 具体例

例1:専業主婦が離婚する場合

夫が会社員として20年間働き、その間妻が専業主婦だった場合、3号分割の制度を利用すると、その20年間の厚生年金保険料の50%が妻に分割されます。

例2:双方が働いていた場合

双方が働いており、妻がパートタイムで夫より少ない収入だった場合、合意分割で50%までの分割が可能です。分割割合は夫婦の話し合いで決定します。


7. 今後の展望と制度改善の議論

7. 今後の展望と制度改善の議論
7. 今後の展望と制度改善の議論

近年、日本では年金分割制度の認知が進む一方で、手続きの煩雑さや分割額の不足が問題視されています。特に、離婚後の生活保障が十分でないケースが多く、さらなる制度改善が求められています。

  • 情報提供の強化: 年金分割に関する情報をより分かりやすく提供する取り組み。
  • 手続きの簡略化: インターネットを活用した申請手続きの効率化。
  • 分割対象の拡大: 基礎年金部分を分割対象とする提案など。

8. さいごに

8.さいごに
8.さいごに

年金分割は、離婚後の生活を支える重要な制度です。ただし、手続きの期限や必要書類、夫婦間の合意など、注意すべきポイントが多いため、事前にしっかりと準備をすることが重要です。専門家のアドバイスを受けながら進めることで、トラブルを回避し、スムーズな手続きが可能になります。

離婚や年金分割についての詳細な情報は、最寄りの年金事務所や市区町村の相談窓口で確認することをお勧めします。

東京都の弁護士などの離婚相談者一覧

目次